2019/11/16

言葉のちから その151

 

春の魔法

 

まもなく春を迎えようとする、ある晴れた日。

男なニューヨークの公園で、浮浪者を見かけました。

 

その浮浪者は首に「I am blind.」と書いたものをかけて、物乞いをしていました。

 

「そうか、彼は目が見えないのか・・・・・・・」

 

しかし通行人は、誰ひとりとして彼にお金をあげませんでした。

素通りです。

 

芝生に座っていたその男は立ち上がり、

浮浪者に近づきました。

 

男は少しばかりのお金を浮浪者に恵み、

その間に気づかれないように

浮浪者が首からかけていた「I am blind.」という文字を書き換え、そして別れました。

 

それから1時間が過ぎるころ、

その浮浪者は異変に気づきました。

 

「おかしい・・・・・」

 

「おかしい・・・・・」

 

 

「あの男に恵んでもらってからの1時間。それまでは誰ひとりお金を恵んでくれなかったのに、あの男に出会ってから、今度はすれ違う人、すれ違う人が恵んでくれるようになった」

 

物乞いのお椀にはコインがあふれ、人々が同情の声までかけてくれるようになった。

 

「あの男の運なのか? あの男は魔法使いなのか?」

 

実は、男は「I am blind.」という言葉をこう書き換えていたのです。

 

「Spring’s  coming  soon.   But  I  can’t  see  it.」