2019/8/12

言葉のちから その89

言葉のちから 【自分がいやになった そんな時に】      

自分の感受性くらい
      茨木 のり子

 『ぱさぱさに乾いていく心を
  ひとのせいにするな
  みずやりを怠っておいて

  気難しくなってきたのを
  友人のせいにするな
  しなやかさを失ったのはどちらなのか

  苛立つのを
  近親のせいにするな
  何もかも下手だったのはわたくし

  初心消えかかるのを
  暮らしのせいにするな
  そもそもが ひよわな志にすぎなかった

  駄目なことの一切を
  時代のせいにするな
  わずかに光る尊厳の放棄

  自分の感受性くらい
  自分で守れ
  ばかものよ  』

 

 

-茨木さんは、言います。


「『ばかものよ』は自分自身に向かっていった言葉なんです。おっかない人と思われました。まあ、思いたければ思いなさい、でいいんだけれど」
(戦中、戦後を通して)「結果として、自分の中の小さな目のほうが正しかったのです。好き嫌いというのも大切で、自分の感性のほうが正しいと思うようになりました。人から強制された思想やイデオロギーが間違っているときって、立つ瀬がないでしょう。自分の感性を信じたいと思います。」

 この詩に、自分を見つめない人はいないでしょう。そんな強さも時には必要なのかもしれませんね。